議会活動

学校現場におけるデイジーの活用について

平成 19 年 9 月定例会:一般質問 (2)

◯中小路健吾君

次に、特別支援教育など学校現場における「デイジー(Daisy)」の活用についてお伺いいたします。 本年4月から改正学校教育法が施行され、本格的に特別支援教育がスタートをいたしました。

この法改正により、盲・聾・養護学校は特別支援学校に一本化され、地域の特別支援教育のセンター的機能を担うことになります。また、小中学校、高等学校、幼稚園においては、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、高機能自閉症などの児童生徒に対してよりきめ細かな教育を行っていくことになります。

特に後者については、文部科学省の調査によると LD、ADHD、高機能自閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている児童生徒が約6%程度の割合で存在する可能性が指摘されており、その対応が喫緊の課題となっています。

本府においては、小中学校における校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの配置、小中学校にくわえ幼稚園、保育所、高等学校等を対象にした特別支援学校のチームによる地域単位での巡回相談などを通じて、通常学級に学ぶ LD 等を含め障害のある児童生徒に対する適切な指導と必要な支援を行うためのシステム作りを推進してきました。

また、「特別支援教育充実事業」により、小中学校に 100 名の非常勤講師を新たに配置し、さらに中学校にも通級指導教室を設置するなど体制整備も順次すすめていただいているところであります。

このように、本府においては、本年4月を待たずに、積極的に様々な面においてシステム作りや体制整備・環境整備を進めてきたわけでありますが、今後はより具体的にそれぞれ個の特性にあった学習・教育への支援の充実を図っていく段階にさしかかっているといえます。

そこで、今回は、主な発達障害の中でも LD、とりわけ中でも読んだり書いたりすることが苦手とされる「ディスレクシア」への支援について取り上げたいと思います。

LD(学習障害)とは、「全般的な知的発達の遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態」を指すとされ、中枢神経系の何らかの機能障害が原因であると推定されています。

中でも「ディスレクシア」と呼ばれる症状は、知的には問題が無く、聴覚・視覚の知覚的機能は正常なのに、読み書きに関しては特長のあるつまずきや学習の困難を示すもので、LD の中心的な症状だとも言われています。その特徴は、かなりの個人差はあるものの、「長い文章を正確に早く読むことが困難」、「文中に出てきた語句や行を抜かしたり、繰り返して読む」、「一字一字は読めても文意を取るのが難しい」などが挙げられ、学校生活の場面で言えば、教科書や黒板に書かれた字を認識すること自体に困難があったり、その結果授業に集中できなかったりするわけです。

このような「ディスレクシア」の症状は、見た目に障害が現れにくく、親や学校など周囲からの認知は非常に難しいものがあります。場合によっては本人までもが、そういった症状にあることを自覚できないケースもあります。

そして本人は、学校の授業に一生懸命取り組んでも、どれだけ努力をしてもなかなか成果を出すことができません。その結果、勉強に取り組む意欲をなくし、自分に対する自信を失い、さらに学校の授業についていけなくなるという悪循環が起こります。

こうした「ディスレクシア」の症状の発現率は、英語圏では10%から20%と言われており、中でもアメリカでは全学童の10~15%がこの症状を有しているとも言われています。我が国においては、先ほどの文部科学省の調査でおよそ4.5%、すなわち25人に1人程度存在するとされており、決して少ない数字ではありません。

そこで、今、注目されているのが「デイジー(DAISY)」と呼ばれる技術です。

「デイジー」とは「Digital Accessible Information System」の略称で、スイスに本部を持つ国際共同開発機構である「デイジーコンソーシアム」が、視覚障害者や普通の印刷物を読むのが困難な人々のために開発・維持している国際標準規格のことで、専用のソフトウェアを使いパソコンの画面上で本を再生あるいは作成する技術です。具体的には、書かれている文字を音声が読み上げ、同時に読み上げている部分の文字がハイライトされるもので、イメージとしてはカラオケの画面を想像していただくのがもっともわかりやすいのではないでしょうか。

これらの技術は、世界共通のユニバーサルデザインとして供用されており、製作・再生のためのソフトも無償で提供されています。

これらの「デイジー」を活用した図書の効果としては、「視覚と聴覚の両方から情報を得ることができるので、読みの困難を軽減することができる」、「文字がハイライトするので文字を目で追うことが困難な人でも使いやすい」、「文字を読む労力が減るため内容の意味を理解するのに集中できる」、「人の手を借りずに自由に読めるため自主的に本を読み、読書に対する意欲も高まる」ことなどが挙げられ、こうした効果を考えたとき、一般の図書だけではなく教科書のデイジー化とその活用に対する期待は大きいものがあるといえます。

そこで、まず、こうした「デイジー」の学校現場での活用の可能性について本府教育委員会としてどのようにお考えでしょうか。ご所見をお伺いいたします。

併せて、こうした電磁気媒体としての「デイジー教科書」は学校教育法が規定する教科書等の中においてどのような位置づけになるのか。教育委員会のご見解をお伺いいたします。

現在、「デイジー教科書」については、普及運動をされている NPO 団体が個人に対して学校や家庭で使用することを前提とした提供をされているものの、学校現場で広く活用されている状態にはありませんし、まだまだその存在すら知られていないのが現状ではないでしょうか。

そこで、まずは本府教育委員会として各学校に対して情報発信を行う、あるいは様々な教職員等への研修の場面を活用するなど「デイジー教科書」の存在や可能性について広く周知していく必要があると考えますがいかがでしょうか。

「デイジー図書」や「デイジー教科書」の普及に当たっては著作権法上も多くの課題を抱えています。
先ほど申し上げた NPO 団体も教科書をデイジー化するに際しては、ある特定の個人に対してのみ使用する旨を一つ一つ教科書会社に届出て使用をされています。その意味で、「デイジー教科書」がより広く頒布・使用されるためにはまだまだクリアしなければならない課題が多々あります。
しかしながら、すべての子どもたちに学習の機会を保障していくという観点からは、「デイジー教科書」の活用は間違いなく必要です。その意味で、本府における先駆的な取組み を期待し、積極的なご答弁をよろしくお願いいたします。

◯教育長(田原博明君)

中小路議員の御質問にお答えいたします。
学習障害(LD)の子どもに対する教育的支援でありますが、LDの子どもたちには、読み書きについて申しますと、議員御紹介ような学習上の困難が、一人一人固有に存在しております。このため、各学校では、例えば本を読む場合に、ラインマーカーで色を塗ったり、作文を書くのにパソコンを使ったりと、一人一人の状況の合わせて指導上の工夫を行っており、「デイジー図書」につきましても、その工夫の一つとして効果的な教材になりうるものと考えております。

現行の制度では、「デイジー図書」のような電磁記録媒体は、学校教育法に規定する教科書用図書としては認められておりませんので、「教科書図書以外の図書その他教材」いわゆる補助教材として扱われるものと考えておりますが、「デイジー図書」を学校教育の場で活用していくためには、御紹介のように著作権法や学校教育法による法制度上のしばりや、作成に要する時間の問題等の課題があります。

しかしながら、今日の情報化社会において、生涯のある子どもたちの学習環境を整えるためにも、議員御指摘のデイジー図書も含めて、LDの子どものための友好な教材、指導方法の研究を行うことは重要であると考えており、まず、特別支援教育に関する教員研修等の機会をとらえて、デイジー図書を紹介するなどの普及啓発に取り組んで参りたいと考えております。今後とも、特別支援教育の指導方法については、多様な研究を進めて参りたいと考えております。

◯中小路健吾君

積極的な御答弁、まことにありがとうございました。先ほども申し上げましたように、先般の文部科学省の発達障害児等への取組み状況の調査を見てましても、今、実態把握をまずされていて、それぞれのシステムづくり、あるいは体制整備を進めていいただいておりまして、ここから先に、いわゆる個別の、それぞれ個人に対してどういう教育を行なっていくのかとというところが実は一番難しい状況なのかなというふうに思っております。

実態把握は、公立の小中学校でおよそ80%、70%近くできているようでありますが、個別の教育支援計画の作成については、まだまだ全国的にも20%前後の数字であるというような報道もなされておりますので、そうした個別の、それぞれの子どもに対してどういう支援ができるのかという部分の一つのツールとして、ぜひこういうデイジー図書のようなものが、また教科書としても活用できるような仕組みづくりについて、これは国とも調整が要ると思いますので、ぜひとも積極的にお取り組みをいただきますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

御清聴まことにありがとうございました。