議会活動

児童虐待対策について

平成 18 年 12 月定例会:一般質問 (1)

◯中小路健吾君

民主党・府民連合議員団の中小路健吾でございます。さきに通告しております数点につきまして、知事並びに関係理事者に質問をいたします。

質問に入ります前に、議長のお許しをいただき、一言申し上げます。

去る 10 月に発生いたしました長岡京市内における幼児虐待死亡事件は、本府のみならず、地域社会におきましても大きな衝撃を与える、極めて悲しい事件でありました。ここに、まず、本当に短い人生の幕を閉じられました佐々木拓夢ちゃんの御冥福を心からお祈り申し上げます。

今回の幼児虐待死亡事件については、この間の本府議会における臨時の厚生労働常任委員会や決算特別委員会の書面審査、総括質疑、あるいは一昨日からの代表質問においても取り上げてこられましたし、一連の報道等によって多くの事実が明らかになっております。

また、一連の事件の経過の中で、寄せられた情報の取り扱いやその対応などにおいて、本府の機関である児童相談所の対応に問題があった点は指摘されてきたとおりであります。

現在、本府では、そうした指摘を踏まえつつ、外部の有識者による「児童虐待検証委員会」を設置し、事件の検証を行っているところであり、12 月中にその報告がまとまるとお聞きしております。また、緊急的な対策として、今定例会には、虐待相談案件の総点検のため「虐待対応協力委員」の増員や「虐待防止アドバイザー」の市町村への派遣など、補正予算の御提案もいただいたところであります。

今回の事件から浮かび上がる諸課題や再発防止に向けた恒常的な取り組み等の詳細については、検証委員会の報告を待って、来年度予算の審議の中でということになろうかと存じますが、今後二度とこんな悲しい事件を起こさないためにも、その再出発に当たり、数点にわたり質問させていただきたいと思います。

それでは、質問に入ります。

まず、今回の痛ましい事件の反省を踏まえた上で、知事がこれまで進めてこられた行政運営のあり方について、どのように総括されておられるのかという観点からお伺いいたします。

知事が御就任以来進めてこられた行政運営の方針の大きな柱の一つは、「府民との協働」「府民と行政のパートナーシップ」という点であります。「新京都府総合計画実現のための中期ビジョン」の中でも、「現地・現場主義を基本に、府民との情報共有により行政の信頼性を高め、府民やNPOとの協働を進める、府民発・府民参画・府民協働の視点を重視する」とうたわれておりますし、各種施策の中でも、こうした視点に基づき積極的に取り組みを進めていただいているところでもあります。こうした、「既存の行政だけで公的課題を解決することは難しい」「府民や民間企業、NPOとのパートナーシップの中でこそ効果的かつ効率的に問題を解決できる」といった認識は、私の思いと軌を一にするものでありますし、これからもさらに積極的に取り組むべきだと考えます。

こうした府民との協働という観点から見た場合、今回の事件は、協働の前提にあるべき府民と行政の信頼関係を著しく傷つけてしまったと言わざるを得ないのではないでしょうか。

「児童虐待」という公的課題を考えれば、一義的には、児童虐待そのものをどうやってなくしていくのかという点が重要であることは言うまでもありません。しかし、悲しい現実として、日々どこかで虐待が行われ、多くの子供がその犠牲になっている。そんな現状を目の当たりにするとき、まずそうした犠牲から子供を救い出すことこそが、我々に与えられた責務であり使命ではないかと考えます。そして、そうした責務や使命を果たすために、行政や民間の垣根を越えて構築されてきたのが虐待防止のためのネットワークであったと言えますし、まさに行政と府民のパートナーシップなしでは解決できない問題である と言えます。

特に、今回のケースにおいて、「地域」は間違いなく機能しました。事件の起こった地域は、自治会活動も極めて活発な地域です。その結果、外部からは極めて見えにくいとされる虐待の兆候もしっかりとキャッチされていましたし、とりわけ亡くなった男児のお姉ちゃんの件があって以降、多くの近隣の方が見守りを続けていただきました。そうした土壌があったからこそ、虐待の兆しを察知することができたわけであり、数度となく行われた児童相談所に対する通報・通告につながったわけです。

しかしながら、ネットワークの中核であり、ゲートキーパーの役割を果たすべき児童相談所がその役割を果たせなかった。そして、結果として今回の事態を招いてしまった。この事実は、行政と府民の間にあるべき信頼を裏切ったと言っても過言ではありません。

今回、多くの関係者の方からお話をお伺いいたしました。そこから浮かび上がるのは、虐待など子供が犠牲となる事案が想像以上に私たちの身近な地域社会の中で起こっているという事実であり、そうした事案を目の前にしながらも「手を出したくても出せない」という府民のもどかしい思いであります。ある民生・児童委員の方から「今回、私たちはぎりぎりの線までやれるだけのことをやった。それでも、自分たちには踏み越えられない一線があり、そこから先は行政に期待を寄せざるを得ない。もし行政も何もできないということであれば、私たちは何のために見守りを続けているのでしょうか」、そう問われたとき、私は返す言葉がありませんでした。

今回生じた不信感を払拭するのは、決して簡単なことではないのかもしれません。しかし、そうした不信感を払拭することなしに、今後の再発防止への取り組みはあり得ないと思います。そのためにも、今回起こった事実とその背景、そこから浮かび上がる課題、そしてこれからどうしていくのかという点について明らかにすることは当然のことながら、そのことを本府みずからが府民に対してしっかりと説明をすることが必要であると考えますが、いかがでしょうか。とりわけ、今回の事件が起こった地域の関係者に対して、本府としての説明責任を果たす機会を設けることが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

御所見をお伺いいたします。

さて、今回の事案のみならず、数多くの虐待事案が起こっているという悲しい現実を目の当たりにしたとき、我々が忘れてならないのは、なぜ虐待そのものが起こるのかという視点です。児童虐待という事象において、悪いのは間違いなく虐待をする親です。だからこそ、親自身を更生するなり再教育することなしに虐待そのものをなくしていくということはあり得ないのではないでしょうか。

今回の事件においても、逮捕された父親と同居中の女性は、長女に対しても虐待を行っていました。その長女の件への対応の経過の中で、拓夢ちゃんに対する虐待の兆候は見られないとの判断のもと、見守りを続けながらも、家族と暮らしていくという方針を決定されたとのことです。また、一時保護から施設入所という措置をとられた長女に対しても、いずれかの段階で家族のもとに戻すという方針を持たれており、それがゆえに親との良好な関係を優先させてきたともお聞きしております。

もちろん、虐待が起こっているという現実の中で、子供を親から離すというのは、あくまで緊急的な手段であるし、最終的には子供も含め家族が仲よく暮らしていけることを目指されたという方向性自体を否定するものではありません。しかし、その大前提は、虐待をした親自身が変わることですし、少なくとも変える努力をすることではないかと思います。

そこで、お伺いいたします。

まず、今回のケースにおいて、長女への虐待があって以降、父親あるいは同居中の女性に対しては、行政として何らかの働きかけ、あるいは指導を行っていたのかどうか。事実関係をお伺いいたします。

また、児童虐待の防止等に関する法律においては、その第 11 条において、児童虐待を行った保護者について、親子の再統合への配慮、良好な家庭環境で生活するために必要な配慮のもとに適切な指導をすることが規定されておりますし、児童福祉法においては、都道府県のとるべき措置として、「保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させる」「児童福祉司、児童委員などによる指導を行う」ことなどが規定されています。

そこで、一般に、本府においては、虐待を行った親に対してどのような指導がなされているのか、お伺いいたします。

この間、本府におきましては、中央児童相談所である宇治児童相談所には、虐待を行った保護者に対するカウンセリングを行う精神科医を配置しているとお聞きしておりますが、親自身の更生・再教育という観点から実効的であったのかという検証と、さらなる対策が必要になると存じますが、いかがでしょうか。御所見をお伺いいたします。

◯知事(山田啓二君)

中小路議員の御質問にお答えいたします。

長岡京市における虐待事件についてでありますが、児童虐待の対応につきましては、地域における子供の見守り活動と、それを踏まえて活動する行政のパートナーシップが不可欠であります。そうした観点から、京都府といたしましても、児童相談所の体制の強化、京都府児童虐待防止ネットワーク会議の設置、市町村児童虐待防止ネットワークの構築等に取り組んでまいりました。御指摘のように、府民協働ということを私は大きな柱の一つとして取り組んできた、その施策の一つでありまして、それだけに、今回、民生・児童委員さんから通報いただきながらそれを生かすことができなかったことは、大変残念であるとともに、非常に重大に受けとめている次第であります。

事件後、直ちに、児童相談所の虐待案件の総点検や、市町村等関係機関との緊急会議を開催しました。また、今回の事件で大変な御心労をおかけしました近隣住民の皆様に対しても、メンタル面への影響も懸念されますので、長岡京市と協力して、心と身体の相談等にも取り組んでまいりました。

事件の背景・原因・課題につきましては、民生・児童委員さんなど長岡京市の方からもしっかりとお話を伺う中で、児童虐待検証委員会で、今、検証いただいているところでありまして、年内にも報告書を取りまとめていただく予定であります。

議員御指摘のとおり、まさに、府民の信頼というのはマイナスのところから始めていかなければならない。それを回復していくためにも、私は、この検証結果というものをしっかりと受けとめて府民の皆さんに理解していただけるように説明するとともに、検証結果を踏まえまして具体的に対策を示していく必要があるというふうに考えております。

そして、特に長岡京市や主任児童委員さんなど地域の方々に対しては、現地において、検証委員会にも御出席をお願いする中で、検証結果の内容や府の考え方を説明し、理解を求めていきたいと考えておりますし、同時に、京都府児童虐待防止ネットワーク会議や府内の全市町村、府民の方々に対して、会議やホームページ等によっても幅広く説明を行っていきたいというふうに思っております。

あわせて、来年度の予算編成の中で、議会の御指導をいただきながら報告書の提言内容の具体化を図り、二度とこのような事件が発生しないように、組織を挙げてしっかりとした対策を講じてまいりたいと考えております。

その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁をさせていただきます。

◯保健福祉部長(和田健君)

児童虐待についてでありますが、長岡京市の事案では、京都児童相談所は、児童の姉を再び家庭で暮らせるよう家族関係の修復を図るという方針を持って、実父や同居女性に対応してきたところでございます。そうした方針のもとで、姉の一時保護にかかわって施設入所に至るまで繰り返し面談を行う一方、施設入所後は、主任児童委員さんから通報をいただいた4回のうち2回については、施設訪問の際、被害男児の元気な様子を確認し、親子うまくいっていると感じていたところでございます。さらに、児童相談所職員が単独で姉に面会し、姉の状況を連絡するほか、定期的に電話連絡を行い、実父の子供に対する思いや状況変化を確認するなどの中で、実父が心を開き、担当者に家庭や子育ての悩みを打ち明けるなど、一定の信頼関係を築くよう働きかけを行っていたものでございます。しかし、本件につきましては、姉の家庭復帰に目が向く余り、被害児童についての判断や対応に問題があったと考えているところであります。

本件を離れた一般的なケースといたしましては、まず、子供の安全を確保することを最優先に、直接確認を行い、その上で保護者と児童を分離することが必要かどうかを判断することを基本に対応しているところでございます。しかしながら、虐待を行った保護者は、多くの場合、保護者がみずからの行為を虐待と認識していないという場合があるため、児童相談所では、児童福祉司等が子供との向き合い方などについて、粘り強く指導を行っております。

保護者への指導につきましては、法制度上、指導・勧告等の規定は設けられているものの、現実問題としては保護者の前向きな姿勢が必要であり、児童相談所では、まずは子供の安全を確認・確保しながら保護者との間でしっかりとしたコミュニケーションをとり、徐々に信頼関係を築きながら対応しているところでございます。

今後、子供の安全の確保を徹底した上で、保護者への働きかけが実効あるものとなるよう、支援プログラムの作成や法的な整備について国に要望してきているところでありますが、京都府といたしましても、検証経過も踏まえ、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

宇治児童相談所に配置している精神科医については、虐待を行う保護者が、うつ、神経症など精神的に不安定で心の問題がある場合などに、必要な診断・助言を行っているところでございます。保護者への指導・再教育は、議員御指摘のとおり大変重要と考えており、今後、保健所における子供のクリニックなどの機会もとらまえ、未然防止の観点も含めて、精神科医の一層の活用を図ってまいりたいと考えております。

◯中小路健吾君

御答弁ありがとうございました。

まず、1つは、虐待を行った親に対する対策ということでありますけれども、本当に虐待という事案がふえ続けているということは間違いない事実でありますし、そのことは数字からもはっきりあらわれていると思っています。その中で、数がふえているので、当然のことながら、職員の体制ですとかいろんな課題というのはあるとは思うのですけれども、まずは虐待自体が起こらないように、もっと前の段階で何かできることはないのかという観点からも、ぜひ対策をしていただきたいなと思いますし、それぞれの虐待には、起こる背景というのは一般論で語れない、いろんな背景があるんだと思います。その背景という観点からも、今回の検証委員会の中では、ぜひとも検証を行っていただいて、虐待が起こる前の段階で何らかの対策ができないかなという思いを持ちながら、これから取り組みを 進めていただきたいと思います。

もう1つ。そうした中でも、すぐに虐待というのはなくなるわけではありませんし、そういう虐待の現場にさらされている子供というのは、まだまだ地域の中にはたくさんいるんだというふうに思います。その中で、児相の体制ということで再発防止、まずは助けるということが必要なわけですけれども、その部分については、今、検証委員会で御検討いただいて、その中でのこれからの対策ということになろうかと思いますが、組織のあり方とか体制の問題というのは、もちろんあるというふうに思います。

しかし、そうした課題以上に、いろんな組織ですとか体制の中で働かれている職員の方の意識というのが、いま一度私は考えなければならないのかなというふうに思っております。現地・現場主義とか府民参画ということは、いろんなプランとか、これまでの知事の方針の中でもたびたび出てくる言葉だと思います。私もそのとおりだというふうに思っています。ただ、そのことが、現場の第一線で御苦労いただいている職員の皆さんにどこまで浸透しているのかどうかという点については、今回の事件を振り返りますと、やはり少し疑問に感じざるを得ない。その意識を変えていくということは、組織を変えたり、制度を変える以上に多分一番難しい問題だと思いますが、今回の事件を受けとめていただいて、その支払った代償の重さというものを受けとめていただく中で、今後の対策をぜひとも要 望させていただきたいと思います。