議会活動

地方債(府債)の発行について

平成 18 年 9 月定例会:代表質問 (4)

◯中小路健吾君

次に、分権議論の項目の最後として、地方債の発行に関してお伺いいたします。

京都府の発行する府債残高は、財政健全化指針以降の公共事業の抑制により増加傾向が鈍化したものの、平成 13 年度以降の臨時財政対策債の激増などにより、平成 17 年度末現在でおよそ1兆 3,200 億円となっております。また、平成 18 年度の一般会計当初予算においては、歳入面で府債による財源の調達が 915 億円であり、歳入総額全体の 11.5%を占めています。一方、歳出面においては、これまでの府債の元利払いである公債費が歳出総額 全体の11.4%に当たる 911 億円となっています。このように、京都府の財政運営上、ストック・フローの両面において府債の管理は無視できない状況になっています。そうした中で、本府においては、公債費に普通建設事業費を合わせた実質投資的経費を原則平成 17 年度ベースに抑制すること、府債残高を平成 25 年度に減少に転じさせるように発行をコントロールすることを柱とした「公債費プログラム」を策定し、御尽力いただいているところではあります。

さて、こうした状況のもと、地方財政改革の一連の流れの中で、地方債の発行をめぐる状況もまた急激に変化しつつあります。先ほど触れた「地方分権 21 世紀ビジョン懇談会」の報告においては、地方債の発行について「地方の自主性に委ねられ、資本市場において各自治体の信用力に応じた地方債の格付けが行われる状況が速やかに実現されるよう、環境整備を行うべき」としています。こうした方針を受け、総務省は8月に入って、市場で地方債を公募している地方自治体 38 団体のうち、これまでから個別で金融機関と交渉してきた4団体を除く 34 団体に対して、表面利率などの発行条件を横並びで決める方式を見直すよう指示しました。このことを受け、大阪府、埼玉県などの4府県は、9月発行の公募地方債の発行金利を個別に金融機関と交渉する方針を決定、その結果、埼玉県が9月に発行する 200 億円の 10 年債の表面利率が 1.8%となる一方、同じく大阪府が発行する 200 億円の 10 年債の表面利率は 2.0%になるなど、自治体間によって格差が出始めています。

そこで、まず、本府はこうした方針転換をどのように受けとめ、どのような対応をしてこられたのか、また、今後どのように対応していかれるのか、御所見をお伺いいたします。

さて、本府の平成 18 年度の起債発行計画では、発行予定額がおよそ 1,480 億円であり、うち公的資金からの調達が約 80 億円、民間資金からの調達が 1,400 億円となっており、調達額の大きさや民間資金の占める割合の高さを考えれば、府債の発行条件が今後の財政運営にとっても、大きな影響を与えることが容易に予測できますし、今後、金融政策の転換に伴い、長期金利の動向等も考慮すれば、金融機関との交渉が極めて重要になるのではないかと考えます。

そこで、少し懸念されるのが、果たしてそういった金融に関する知識やノウハウが本府の中で蓄積されているのかどうかという点です。市場性の極めて高い金融市場における交渉という点を考慮すれば、これまで余り行政に求めてこられなかったスキルや能力が必要とされているわけであり、そうしたノウハウを蓄積できるような体制整備や人材の育成が必要になっていくのではないかと考えますが、いかがでしょうか。御所見をお伺いいたします。

さて、あわせて「京都みらい債」についてお伺いいたします。

最近の地方債をめぐる動向の一つとして、自治体が地元住民等に購入者を限って発行する地方債である「住民参加型市場公募債」、いわゆる「ミニ公募債」の発行が増加してきています。総務省によると、平成 17 年度には 108 件、総額 3,445 億円が発行され、平成 16 年度から比べておよそ5%の伸びを示すなど、増加傾向にあるとのことです。こうした増加の背景には、国債よりも利率が高めに設定されるなど、超低金利のもとで運用先に悩む個人投資家などに受け入れられている点があります。今後、日銀の量的緩和の終結を受け、国債金利の上昇予測が高まれば、固定金利型で発行されることが多い地方債の買い控えが予想されますし、他の金融商品との競合も激しくなることが予測されますが、自治体の資金調達手段の一つとして活用される方向にあることは間違いありません。

さて、本府におきましても、こうした住民参加型の地方債として、平成 15 年度から「京都みらい債」を発行しています。本年度で第4回目の発行を迎え、7月の募集では発行額 100 億円が募集期間の終了を待たずに完売したとお聞きしております。さて、私は、こうした住民参加型で「京都みらい債」を発行することの意義は、単に資金調達手段の多様化ということのみならず、京都府の提供するさまざまな行政サービスとそれを支える財政負担の関係をより明確にすることではないかと考えます。自治体会計の一つの問題点は、「全体」と「部分」の関係が不透明な点にあります。例えば過去に行った借金の元利払いである公債費は、言いかえれば過去に行った事業の後年度の負担分の総計です。公債費「全体」は、当然のことながら毎年の予算等によって把握できます。しかしながら、それが「何を行ってできた借金」なのかという「部分」はなかなか見えてきません。もちろん、予算段 階で見れば、一つ一つの事業を行うに際し、事業額とその財源が明記され、そのうち起債によるものがどれくらいなのかはわかります。しかし、そのことが見えるのは、あくまで当該事業年度においてです。そこでなされた起債を返還していくために、後年、毎年どれくらいの負担を行っているのかという「部分」は、公債費という「全体」としてしか見えにくい状況になっているわけです。

その一つの原因が、起債によって調達した財源と事業に使用する財源の関係性が不透明な点にあります。もちろんお金に色がついているわけではありませんし、一括して調達したものを配分することは事務執行の効率上からも当然のことかもしれません。しかし、「この事業はどの借金によって行われているのか」あるいは「この借金はどの事業の結果であるのか」を意識し、明らかにしておくことは、知事がよくおっしゃる公共サービスの「受益」と「負担」の関係を明確にする上で欠かすことのできない作業ではないでしょうか。とりわけ起債によって賄われる事業というのは、長期間にわたりその事業効果があらわれるものが原則です。その意味で、時間軸を見据えた上で「受益」と「負担」を考えていくためには、この関係性を明確にする必要があると考えます。

こうした観点からすると、「京都みらい債」の発行は、発行の目的を明示し、事業と財政負担の関係がこれまで以上にわかりやすくなっているという点において高く評価できるものです。本年度の発行を例にとれば、その資金使途として「安心・安全の京都づくり」事業への活用を掲げ、「災害に強い京都府づくり」として河川整備、治水対策、府立学校耐震補強事業等、「災害情報の共有・体制整備」として衛星通信系防災情報システム整備、府立医大診療機器整備等、「子どもと地域の安心・安全」のための警察署再編・機能強化事業、交番・駐在所建設等を例示するなど、調達した「財源」とその「使用目的」の関係性はよりわかりやすいものになっていると言えます。

そこで、お伺いいたします。今後、こうした関係をより明確にしていく意味でも、調達段階での目的の明示にとどまらず、実際にどのように使われたのかという点を明らかにし、「みらい債」を購入された方、あるいは広く府民に伝えていくことが重要かと存じますが、いかがでしょうか。

言うまでもなく、今行うことというのは、「受益」の面からも「負担」の面からも将来の世代に対して大きな影響を与えます。大変厳しい財政環境の中においても、安心・安全への投資など、なすべきことはまだまだたくさんあるという本府の状況を考えれば、我々地方自治体におけるファイナンスのあり方も変革していく必要があるのではないでしょうか。

ぜひとも知事の積極的な御答弁をお願いいたします。

◯知事(山田啓二君)

それから次に、地方債の発行についてでありますが、市場公募債の発行条件の決定方法につきましては、これまでの横並び方式、いわば相互扶助的な形で金利水準を各団体が一緒になって決めていた形から、今、大きく個別方式へと移行しようとしております。こうした横並び方式というのは、財政状況の悪い団体、府県にとっては一定のメリットがあったのは事実だと思います。しかし、このような方式は、個々の自治体の財政運営を反映しない護送船団方式と批判される中、個別決定方式へと移行しつつあるのはいたし方ない点があるというふうに考えております。しかし、急激な移行は、地方債の水準が一部の極めて財政状態の悪い団体の影響によりまして、全体として悪化していくということを私どもは懸念しております。

京都府は、地方債の発行について国の協議が必要か否かを判断するために、最近発表されました財政規模に占める借金返済の割合を示す実質公債費比率が一番悪い長野県なんですけれども、20.2%のおよそ2分の1であります 10.3%、これは全国都道府県の中で1位の数字であります。こうした数字を背景に、債券市場では、これは東京都がトリプルA(AAA)という別格の格付けでありますけれども、これは財政規模も資産価値も全然違いますから非常に難しい点がありますけれども、先ほど御指摘のありました埼玉県や静岡県、千葉県、そして京都府の4府県が次のダブルAプラス(AA+)という格付けを受けているところでありまして、非常に市場では高い評価を得ているところであります。

したがって、個別決定方式への移行に当たりましても、府としてはこれからも行財政改革の取り組みを積極的に進め、市場での評価を維持、高めていくことが必要であります。特に今後は、御指摘のように、より一層市場との対話による資金調達が必要になりますので、既に専門家を交えた研究会を設置しておりますし、さらにIR等のための研修に職員も派遣をしているところであります。今後、金利変動リスクへの対応や有利な資金運用など、府民負担をできる限り減らしていく観点に立った総合的な財政運営を図るとともに、投資家等に対しましては、京都府の行財政運営の状況をしっかりと説明し、理解を得ていく取り組みを進めてまいりたいと考えております。

「京都みらい債」につきましては、議員御指摘のとおり、購入された府民の方々のみならず、実際に償還を負担する将来の府民の方々に対しても説明責任を果たすことが重要と考えておりまして、現在、発行の段階から具体的な使用目的をお示ししているところでありますけれども、今後は活用の結果につきましても、ホームページ等を通じまして府民の皆様に伝えてまいりたいと考えております。

◯中小路健吾君

最後に、地方債についてでありますが、これからはこの金利をどう決めていくのかというのは極めて大事なことで、やはり後々の負担というものに対して大きな影響を与えるものです。もちろん 1,000 億出していて 0.1%金利が違えば1億円の負担が変わってくるわけですし、それが 10 年続くということは単純計算でも 10 億変わってくるわけです。その意味でも、そういうところの真剣な議論というのをしていただかなければいけないというふうに思いますし、そのためにもぜひそうしたスキルを持った行政の職員さんの育成という のが極めて重要になってきますし、これは単に府債の交渉ということだけではなくて、今持つさまざまな基金の管理の運用、ファシリティーマネジメントということもしっかり取り組んでいるわけです。これもいえば、今の資産というものをどう活用するかということで考えれば、やはりそうした金融ノウハウも私は必要になってまいると思います。その意味でも、ぜひともこの点もしっかりとしたお取り組みを進めていただきたいというふうに思います。