中小路健吾の雑感独言

『商店街はなぜ滅びるのか/新雅史(光文社新書)』

book-syoutenngai『商店街はなぜ滅びるのか~社会・政治・経済史から探る再生の道/新雅史(光文社新書)』は、商店街の形成と衰退の過程を丁寧にまとめつつ、日本社会の構造変化を的確に語っている。まさに、戦前・戦後の社会史、経済史に、「商店街」を切り口にすることで魂とリアリティを吹き込んだと言える。

著者は、丁寧に歴史を振り返り、「商店街はまったく伝統的な存在ではない。現存する多くの商店街は20世紀に入って人為的に創られた。」と断言する。

戦前、20世紀初頭、とりわけ第1次大戦後の不況期に、企業や工場が大規模化するに従い「新卒採用」という近代的な人事システムが構築され、結果として農村から都市へ流入する人口の受け皿として零細小売業が急増する。

同時に、百貨店や公設市場の形成にともない、地域社会の新しいインフラとして零細小売業の組織化と商店街が「発明」される。

そして、戦後、 労働力人口が急増する中で、製造業中心の「雇用の安定」とは別に「自営業の安定」という「両翼の安定」が果たされることになるわけだが、これを実現するための保護と規制がかえって「自営業の安定」を脅かすことになったと指摘する。

また、商店街を形成する個々の零細小売業が「近代家族」を中心に運営されてきたことが、その後の商店街の衰退に拍車をかけたと指摘する。

そして、オイルショックを境に、流通革命、コンビニの出現、郊外型スーパーの出現を、1970年代から80年代にかけての日米構造協議や規制緩和の流れとともに見事に説明をする。

この本は、単に商店街の歴史というだけではなく、戦前・戦後の歴史を物語る秀逸作。

もちろん、著者は商店街への冷静なまでの分析の上に立ち、商店街の必要性を現代の社会の中で主張していることも付け加えておきたい。